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■ 2011.APR.
 この度の東北関東大地震において被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
 また、被災地等におきまして、救援や復興支援など様々な活動に全力を尽くしていらっしゃる方々に深く敬意と感謝の意を表しますとともに、一日も早く復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。
ひとりで見究めようとする力
 担当した『双極性障害のすべて』が間もなく刊行されます。著者ラナ・キャッスル自身が、もがき苦しみながらも、常に向き合い続けてきた〈双極性障害〉という病いの体験をもとに書かれた本です。自己の体験・症状をケース・スタディとして惜しげもなく呈示し、本人が模索したさまざまな治療や対処の数々、その効用や利用の仕方を細かく検討した紹介がなされています。詳細は実際にお読みいただくこととして、本書を編集しながら、受験勉強や論文執筆へ取り組んでいたときの自分を思い起こしました。自分がいったい何に悩み、苦しんでいるのか、できうるかぎり〈自分ひとりの〉力でそれを見つけて究めようとする姿勢こそが現状突破の第一歩であり、万事につけてその構えが有効であることを再確認する思いでした。〈著者みずから〉が切り開いた克服への意志のうちに、克服する力がじつは潜んでいる、そんな気がしました。(編集U)
正しい情報を手に入れることの重要性
 今回関東で地震を経験していちばん感じたことは情報のないことに対する不安です。これは災害ばかりでなくあらゆる分野でも同じことだと言えるかもしれません。近刊である『市場における欺瞞的説得』は、消費者がいかに欺瞞的マーケティングから身を守り、より賢い消費者になるかという問題提起をしています。政府の政策や規制などに頼って自分を守ってもらうわけにはいきません。本書は、私たちが自らを守るための知識やスキルを獲得し、より賢い消費者になるための道しるべとなるものです。(編集X)
心のケアに向けて
 今回の震災は被災地はもちろんのこと、全国の多くの子どもたちにも深い心の傷を負わせたのではないでしょうか。これから復興が進み、時間が経つにつれ、子どもたちの心のケアの必要性が大きくクローズアップされてくるのは言うまでもありません。弊社書籍『子どものトラウマと心のケア』『学校安全と子どもの心の危機管理』『惨事ストレスケア』は、今後、子どもたちの心のケアを行う際に核となる学校現場やさまざまな機関において、大いに役に立つ情報が紹介されています。(営業H)

■ 2011.MAR.
虐待について思うこと
 2月中旬頃から営業部には、大学や専門学校で新年度に使用する教科書の注文や問い合わせが多くなります。ある専門学校では教科書として『子どもの虐待』を指定してくださいました。昔は虐待は特別な環境で起こるものというイメージでしたが、昨今は毎日のように虐待のニュースが流れ、どんな家庭でも起こりうるものとなっています。教科書として売れるのはもちろん嬉しいことなのですが、それだけに虐待問題が非常に深刻なことを思い、複雑な心境です。(営業Å)
新訳版の不思議
 近年、著名な翻訳書の新訳本がでることが多い。現代風にアレンジした文章は読みやすく分かりやすいものになっている。よく知られたものに『赤毛のアン』『夜と霧』などがある。以前の訳を知っている人には物足りなく感じられたりすることもあるらしい。弊社のバイステック『ケースワークの原則』はやはり訳者が交代したので当然ながら最初の訳本とは完全に異なった訳となっている。国家試験にもよく出る「七つの原則」の訳が変わったのは影響が大きく、しばらく混乱が起きたという噂を聞いた・・。(編集X)
心の問題とセルフヘルプ
 薬物依存やギャンブル依存症を克服しようとする人びとの日常は、以前は専門家でも事細かに把握しづらかったと思われるが、現在では写真入りの日記ブログによって一般の人間でも詳細に知ることができるようになった。依存症は心に問題を抱えた状態で陥るので、内面についての記述は、社会にとって大変有益と思われる。心の問題は外部からの援助が欠かせないのに外部からは見えにくいという皮肉な性質をもっている。とくに 「自己責任論」 が強くうたわれる今日では、自ら情報を集め行動しないと治療の機会を得られないまま取り残されてしまう危険があるように思う。弊社書籍 『自傷行為とつらい感情に悩む人のために』では、自分でできることと助けを求めるべきことを整理して分かりやすく解説している。(編集S)
第2版について
 『子ども家庭福祉論』の第2版が出ました。福祉系の書籍は頻繁な改訂が宿命ともいえるのですが、今回もフルモデルチェンジまではいかないものの、結構な修正が入りました。著者の柏女先生は、目下、厚労省にて「児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会」の委員長を務めておられ、3月中には答申を提出されるとのことです。以前、厚生省にて専門官の役職に就いておられた関係か、国レベルの行政の動きを詳しく御存じなので、改訂版刊行の後の動きも見越して執筆されています。法が改正されることや改正内容は、一般紙でも報道されるものの、では現場レベルではどのような影響が出るのかは、なかなかわかりにくいと思います。柏女先生はそのあたりにもしっかり言及してくださっているので、ぜひ、現場の方々にもお読みいただければと思っています。一冊まるごとお一人でご執筆されているので、先生の人柄や信念も行間からうかがえる書です。(編集N)

■ 2011.FEB.
暴力をふるってしまうとき
 ニュースなどで事件が伝えられるとひどく憂鬱な気分になってしまう。どんな言葉や態度がひと(女性)を傷つけるのかが本人にはわからないらしい。これは子どもへの虐待でも同じことだ。加害者同士が役割を替えて相手の立場にたってみることがそのような態度を改めるには役立つらしい。『暴力男性の教育プログラム』は実際にアメリカで使用されて効果がでているそうです・・。(編集X)
人が人を治すとは
 今年最初に手がけた本は、青木滋昌著『精神分析治療で本当に大切なこと』です。著者は現在、名古屋で開業している中堅の精神分析家・臨床心理士です。精神分析の治療とはどのような考えに基づき、患者さんとの間で実際にどのような遣り取りがなされているのかを、とても具体的でわかりやすく、かつ治療者の内面をも明かしながら、包み隠さず紹介しています。精神分析の道具は「言葉」ですが、その言葉の遣り取りを通して人が人を「治す」とはこういうことだったのか、と実感できました。なかでも最終章での事例は、短篇小説を読むようで、目から鱗(うろこ)のみならず思わず落涙しそうになりました。副題に「ポスト・フロイト派の臨床実践から」とありますが、そうした理論や学派を超えて、広く心理療法や心理カウンセリングに携わる方々に役立つこと請け合いの1冊です。(粗忽の編集者)
自分への理解
 変化の激しい現代では、ふとしたきっかけで心が暗い雲に覆われてしまうことがあります。心が不調になってしまったとき、どういった行動が立ち直る切っ掛けになるでしょうか。調子を取り戻す一つの方法として挙げられるのが、自分への理解を深め、自分を客観視することです。日記を書くのも良い方法です。しかし医師にかかる必要があるほどの病気になってしまったときは、認知行動療法が助けとなるかもしれません。これはおもにアメリカ・イギリスで導入されて大きな成果を挙げている療法で、自己客観化を通して治療が行われます。『事例で学ぶ認知行動療法』では独自のツールを駆使し、読者は自分を取り巻く環境を具体的に目で追うことが可能になります。速い時代の流れに身を任せるだけでなく、少し立ち止まって自分の姿を見つめ直すことが健康の秘訣かもしれませんね。(編集S)
『図説 社会心理学入門』 満を持して登場
 齊藤勇先生シリーズの最新刊登場です。企画段階から「本を読まない若い人たちに『おもしろそう』って思わせる本じゃないとダメ。だから、レイアウトは重要」と、言われ続けてきました。重要事項がひと目でわかる「memo」欄を設けてみたりなど“テキスト仕様”にはなっていますが、齊藤先生の真骨頂である、心理学の実験を読み物ふうにコラム化した「トピックス」は健在です。トピックスだけを読んでも、社会心理学の要素がつかめます。ドラマ(特に「CONTROL:犯罪心理捜査」など)で知っている実験が出てくると、知ったかぶりができます。子どもからほんのちょっと尊敬されたりもします。会社で嫌われない身の振り方や、効果的なケンカの売り方など、実生活でも応用可能な知識が満載です。学生さんだけでなく、心理学に興味のある壮年の方々にもお勧めの本です。(編集N)
「ライ・トゥ・ミー 嘘は真実を語る」
 「目は口ほどにものを言い」という諺があるように、言葉にしなくても思っていることが表情には出てしまうようです。心理学者であるカル・ライトマンが表情や仕草から嘘を見破ることで犯罪捜査の手助けをする姿を描いたアメリカの人気テレビドラマ「ライ・トゥ・ミー」(原題“Lie to Me”)は、日本でもCSのFOXチャンネルが2010年4月6日から放送を開始しているので、ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。私も何回か見ましたが、これが結構ハマリます。この主人公のモデルになっているのが、弊社でも翻訳書のある心理学者のポール・エクマン博士です。エクマン著『表情分析入門―表情に隠された意味をさぐる』は、1987年に刊行したロングセラーですが、このドラマの影響もあって昨年の夏ごろから徐々に売行き部数が伸び、8月に12刷、この1月に13刷の重版をいたしました。また、同じくエクマン著の『暴かれる嘘―虚偽を見破る対人学』は、比較的専門的な心理学書で、しばらく品切れのままでしたが、やはりドラマの影響か読者の要望が多く2月末に重版をすることになりました。(営業##)

■ 2011.JAN.
コミュニケーションの教科書
 心理学はコミュニケーションに関する学問ですが、なかでも対人ストレスが大きな命題になっています。研究者の先生方は対人ストレスとは何なのか、どうやったら減らせるのかを日夜探っていらっしゃいます。人は皆、多かれ少なかれ他人の行動が気になるようです。他人の行動や有様からさまざまな情報を読み取り影響を受けるわけですが、そこにはちゃんと法則が存在しています。たとえば、だれかを説得する場合、説得する相手と外見的な特徴が似ているほど説得しやすくなることが分かっています。このような事例をたくさん載せた『影響力の武器 実践編』は、実際の場面を想定して法則を学んでいける、いわば人間関係の教科書です。2011年が昨年よりもよい年になることを願わずにはいられませんが、激動の時代を分け進む時に、この本はあなたのお役に立つと思います。(編集S)
本という情報媒体の型
 子どもが持っていたケータイ小説本を、話の種に眺めてみた。文庫本の大きさなのだが横書きで、段落冒頭の1字下げがない。つまり、全頁とも定規で線を引いたように頭揃えで、左側に文字がひっついている。唖然としつつ頁をめくっていると、「このシリーズ、かわいいでしょ」と無邪気に言ってくる子どもにも呆然・・・。電子書籍の到来した今、欧米の大学テキストのように“データの切り売り”時代が来るのもそう遠くはないだろう。だからこそ、型は大事にしたい。文字が読めれば配置なんぞどうでもよい、という見方もあろう。しかし、紙であれディスプレイであれ、どう文字を置けば情報がスムースに目に飛び込み、結果的に知的満足を得られるかを、我々プロは日々探求している。視覚情報の選別・加工を生業とする編集者の技を、今年も楽しんでいただければと願っている。(編集T)
書評とダメ出し
 書評に取り上げられることは、著者ばかりでなく出版社にも嬉しく、販売に繋がるという期待が高まります。けれど、取り上げられて辛口の書評だったりすると、著者も担当者もすっかりめげてしまいます。でも、考えようによっては、全く顧みられることのない本が多いなかで、取り上げられたこと自体すごい! ここは一つ批判を前向きに活かす原動力としたいものです。どうも私たち日本人に苦手なのは、このダメ出しのコミュニケーションを活かすことなのではないでしょうか。これについては、弊社新刊『ダメ出しコミュニケーションの社会心理』に詳しいので、ぜひご一読ください。(編集X)

■ 2010.DEC.
日記について
 日記とは個人の記録であり歴史です。日本では中世のころから、貴族による『土佐日記』『和泉式部日記』など、文学としての日記が記され、発展していきました。また近代史で超大国として君臨したイギリスでは、17-18世紀から日記の文化が発展し始め19世紀にはすでに日記をつけることは「教養人の一般的習慣」となっていたそうです。現代では日記は、「社会の反省のための資料」としての役割を重視されるようになり、看護、経理、組織の管理などで活用されています。来春刊行される『日記とは何か』(仮題)では、日々の出来事をつづる日記という形式から、人間の様々な行動原理を抽出し解説していきます。多くの日記のサンプルに目を通すだけでも、書いた人の人となりがわかり面白いです。ご期待ください。(編集S)
『ビオンと不在の乳房』の読者へ
 今回はとても書き辛いことなのですが、10月刊行の本書に印刷ミスがありました。115ページの脚注(10)が「オグデンは、ビオンの言う」で終わっていて、そのあとの1行(「抑うつ感情」のなかに“悲哀”という「モーニング・ワーク」のニュアンスを敏感に嗅ぎ取っているのだろう。)がそっくり消えてしまったのです。本書のキーワードとはいえ、不在の脚注では洒落にもなりません。この場を借りまして、本書をご購入いただいた読者各位の目にできるだけ触れることを期待し、お詫び申し上げる次第です。平伏多謝。(粗忽の編集者)
自分の骨の正確な位置を知っている?!
 今年担当した本のトリを飾るのは、『フルート奏者ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと:演奏家のためのボディ・マッピング』。昔、ピアノを習っていたとき、姿勢がどうのこうのと言われた記憶があるが、音楽家にとって骨格をイメージする(ボディ・マッピングというらしい)のは、ケガが防げるなど、ものすごく大事なことがよくわかった。これは音楽家だけでなく、一般人にも非常に良い。ゲラを読みながら、自分の頭蓋骨と首のバランス、背骨と腰骨の位置関係を確かめてみる。周りからは伸びでもしていると思われたかもしれないが、正確な位置に骨がはまると、空気が身体にスーッと入ってきて気分まで爽やかになる。あるべき所に然るべく収まった心地良さ。年末大掃除のモットーにもなりそうだが、その前にやるべきことをせねば(12月20日刊行)。(編集N)
訃報と思い出
 『TATの世界』『TATパーソナリティ』『TAT:絵解き試しの人間関係論』などでお世話になった鈴木睦夫先生が急逝された。学会の後の酒席で、TATの面白さと有用性について長時間お話くださった。某有名事件の加害者に施行するので犯人の人間性の解明に役立てたいと熱く語っておられた。故河合隼雄氏から「TATといえば鈴木だな」と言われて、「鈴木と言えばTATだな」と言われなくて良かったとおっしゃっていた。ご冥福をお祈りいたします。(編集やまぶき)

■ 2010.NOV.
デギュスタシオン・ア・ジャズ
 これは、知る人ぞ知るジャズ・ミュージシャン菊地成孔(きくち・なるよし)のアルバムタイトル。これを聴きながら「あとがき」を執筆したというのが10月刊行の『ビオンと不在の乳房』です。私もつい先日ちょっと聴いてみました。多くが1,2分の断片からなる作品集で、驚きつつも惹かれるものがありました。精神分析とジャズには何か通底するものがあるように思っていましたが、今回また再確認した次第です。なお、その後、菊地氏が神経症の精神分析治療を受けていたことを著書(これも変わったつくりです)で知り、NHKの人気番組『爆笑問題のニッポンの教養』のテーマ曲を手がけていることに気づきました。(粗忽の編集者)
「親の心子知らず」か「子の心親知らず」か
 先日、『親になる自信がない:“親業”訓練の現場から』というタイトルのテレビ番組を見た。「親になるための訓練」を行う講座に通う、小中学生の子どもを持つ30〜40代の母親たちのドキュメントで、思春期の娘を持つ女性がクローズアップされていた。「きちんと育てなければ」と熱心に教育してきたのに、思春期を迎えた娘との関係はぎくしゃくしだし、友人に紹介されて講座に通い始めた、とのことだった。その後の展開はともかく、小社にも悩める親にとっておきの本がある。『10代の心と身体のガイドブック』がそれ。第2章「親としての基本的なスキル」の最初にきっちり書かれている。「聞く。ともかく耳を傾ける」「決して話をさえぎらない」。そして、第4章には「10代の子どもの独立宣言:第1条 われらは余り長い時間、家族と一緒にいられない」。そう、子どもは自分の分身にあらず。「10代の子どもが帰宅後に自分の部屋に直行しても、食べ物を求めて必ず部屋から出てくる。そのときこそ、子どもと話す」。具体例が拙宅と一緒でいちいち肯ける。含蓄あふれるこの本を是非参考にしていただければと思う。(編集T)
学会雑感
 入社したての頃から現在まで学会にはかなり出席しました。先生方の発表を聴いて勉強し企画を立てるのも仕事の一つです。残念なのは日本社会の現状を反映してか、編集者が自由な雰囲気で出入りできる学会が少なくなっていることです。物事にはある程度、例外や緩さがあった方が良いものが生まれると思うので、学会も編集者に開かれたものになってほしいです。とはいえ、本にも人と同じく様々な運命があるようです。企画だけで実現されなかったもの、原稿が出来上がっていながら事情があって刊行されなかったもの、企画からあっという間に本になったもの・・。今回は強靱な生命力?で刊行に漕ぎ着けた『解決志向介護コミュニケーション』をご紹介します。認知症の介護で困っておられる家族も多いはずですが、ここでは「できること」と「例外」に焦点を当てます。そのことだけで、ぎすぎすした家庭の中のコミュニケーションが驚くほど円滑になります。工夫すればこんなに変わると分かることで明るい希望がもてるのです。(編集やまぶき)
電子書籍
 今年の夏頃はかなり盛り上がった電子書籍マーケットですが、各社から端末が発表され一段落したようです。「GALAPAGOS」なんていう笑いを誘う端末もありました。電子書籍は、紙の本と競り合うことになるのか、それとも独自のマーケットを形成するのか。使い勝手を比較すると、個人的には読み心地は紙媒体のほうがまだ上と感じてます(ぺージを指でめくれる機能も、なんか違う……)。しかし技術は日進月歩。アジアでは電子書籍の縦組みルールをどうするかで、国際会議が活発に行われてる模様。ルビの問題など、クリアすべき問題が多いとはいえ、プラットフォームが確立されたら一気に電子書籍が増えていくでしょう。でも、子供のために作られた本は紙のものが残っていくと思うのです。紙の本は子供の友達になってくれるけど、その点、電子書籍はどうだろう、と。いま、子供の心の苦しみを和らげるための本を進行中なのですが、出来上がったら多くの方に「手にとって」いただきたいと思っています。(編集A)

■ 2010.OCT.
ヴィトゲンシュタイン指数
 まず1本の木を自由に描いてもらいます。描き終わったらその木の高さをミリメートルで測ります。そして、その高さを木を描いた人の年齢とすると、一つの指数が得られます。例えば、木の高さが120o、描き手の年齢が40歳とすると、120÷40で指数は3です。描かれた木を見ると、地面からほぼ13oのところで幹の縁が破断しています。そこで描き手に、4歳4カ月(13÷3=4.3、4.3歳=4歳4カ月)のときに何があったかを尋ねます。するとその人は蒼い顔をして、丁度その頃に母が亡くなりました、と答えたというのです。これはドイツの神経科医ヴィトゲンシュタイン博士から『バウムテスト[第3版]』の著者カール・コッホに宛てた私信の中に出てくる一例です。はたして、1本の木が人生を測る物差しになりうるということがあるのでしょうか。(粗忽の編集者)
日本心理学会
 大阪大学で行われた学会は残暑の厳しいなかの学会となった。営業的には、事務局が書籍売り場をどこに設置するかで勝負が決まる。今回は発表会場の分散が比較的少なかったので最悪の事態は免れた。どんな学会でも、ほとんど人の来ない離れた校舎などに書籍売り場が配置されると、出張費も出ない絶望的な結果となる。学問研究を活発化する意味においても、書籍売り場はぜひ人の流れに沿った場所でゆったりと本が見られるようにお願いしたい。さて、『TEMではじめる質的研究』は個人の人生を時間と共に描く質的研究の流れの新しい方法論。このような独自性のある研究が継承され発展することこそ学問の面白さだと思う。(編集やまぶき)
個人のなかの社会 (展望 現代の社会心理学 1)
 この本は、私たちの生きている複雑怪奇な社会を細かく分解して理解しやすい部分に分けてくれます。複雑なものをいっぺんに理解するのは難しい。そこでまず、細かい「部分」に分解して観察してから、全体に目を向けると理解が深まります。著者が大勢いて、しかも第一線で活躍されている人ばかりだったので、なかなか原稿が集まらず苦労しましたが、出来栄えには満足しています。(編集S)
人づきあいの悩みは尽きず
 人間関係は本当に難しいです。「なんでそうなるの?」といった到底理解できない言動に振り回され、挙げ句の果てに「ああいうキャラクターだから仕方がない」と無理矢理自分を納得させた経験をお持ちの方も、少なくないと思います。分かり合えない人がいる一方、無条件に信用してしまう人もいます。そんな複雑な心理を、様々な研究知見を示しつつ解説したのが『人間関係の心理パースペクティブ』です。従来の欧米的視点による見地を踏まえたうえで、日本人的観点から人間関係を読み解く研究も多数収録していますので、現代社会での上手な身の振り方を学べるかもしれません。グローバル化が進むなかでも、人は生まれ育った文化に少なからず影響を受けていることを、改めて感じることができる一冊です。(編集T)

■ 2010.SEP.
人は10分間に3回ウソをつく?
 「あなたの嘘は顔に出る」。これは、昨年全米でスタートした新感覚心理分析サスペンス・ドラマ『ライ・トゥー・ミー(Lie to me) 嘘の瞬間』のキャッチフレーズ。ティム・ロス演じるライトマン博士が嘘発見のエキスパートとして、仲間と共に犯罪捜査をはじめいろいろなシチュエーションでの嘘を見破り真実を解き明かしてゆくリアルで知的なエンターテイメント作品とのこと。そのライトマン博士のモデルが、『表情分析入門』の著者で「微表情学」を提唱したあのポール・エクマン博士。ちなみに、このドラマの紹介パンフの中で表情分析アナリストの工藤力氏が「微表情」について解説していて、その微表情を読み取る上での参考書として『ボディ・ランゲージ解読法』が挙げられています。ドラマのレンタル開始は9月2日。ドラマが先か本が先か、興味のある向きは手に取って見てみてください。(編集K)
シナリオで学ぶ医療現場の臨床心理検査
 毎年のことでわかってはいても、いつもバタバタしてしまう8月。本書もギリギリ滑り込みセーフで刊行でき、晴れて学会に連れて行けます。ホッ。著者の津川先生・篠竹先生には随分やきもきさせてしまいました。HP上よりお詫びいたします。この本、何がおもしろいって、臨床実務の実際が見えることです。心理検査の紹介&解説&解釈書は多々あれど、検査室へクライエントを誘導する仕方や、依頼元の医師の言葉の行間の読み方など、今まで口伝、秘伝(?)だったことが、ついに白日の下に大公開されています。中身の続きは学会&書店にてご覧ください。そして、旅のお伴に連れ帰ってくださるともっとうれしいです。(編集N)
うちの子には躾が必要なんです
 子どもの虐待に関する報道が毎日のように新聞やテレビで報じられている。十年以上前に、ある社会福祉関係の著者から、アメリカでは虐待児の隣に住んでいて通報しないと罰せられると聞かされた。「アメリカはひどい国ですね」と話したら、「日本も十年したらそうなりますよ」と言われ、まさかと思った。けれどそれが現実となった。いったい私たちの隣人や他人に対する関心や思いやりはどこへ行ってしまったのだろうか。躾と称して行われ、連鎖が繰り返される虐待の問題をいち早く捉えて治療に立ち向かったジュディス・ハーマンの『父‐娘 近親姦』はこの問題の根の深さと問題点を教えてくれる貴重な書である。(編集X)
人に伝えるということ
 人生に悩みが現れたとき、それをどのように克服するべきか。大きくわけると3つの方法があるそうです。一つ目は、苦悩の原因がその人の過去に隠されていると考え、過去からの脱却をはかる方法。二つ目が、いまある苦境を訓練によって段階をふみながら克服していく方法。三つ目が、自分の苦境に意味を見出し、そこから学びとることで人生を好転させていく方法で、『はじめてのカウンセリング入門(下)』で著者が熱く語っているのもこの方法です。人は、他人に自分の苦境を理解してもらうと、自分の苦境に意味を見出すことができるようになります。そして意味を見出すことで苦悩から解放されていきます。もしかすると、人の苦悩の大きな部分は、他人に理解してもらえないことが原因で生じるのかもしれません。人に自分を伝えるための、話す力と聴く力は、人間の基本なのだと改めて実感します。(編集S)

■ 2010.AUG.
改正と改訂
 商売がら、厚生労働省の「新着情報配信サービス」というメーリングサービスに登録していますが、報道発表資料や改正条文をはじめ、審議会の議事録や、統計データ等々、毎日大量の情報が送られてきます。なかには「犬の鑑札、注射済票について」など、保健所のボスっぽい情報もあったりして、ちょっと和んだりしています。福祉分野の書籍の宿命として、この大量の改正に合わせるため改訂は避けて通れず、しかも頻繁に行わなければなりません。特に法律とがっちりリンクしている『子ども家庭福祉論』『社会保障論概説』などは、目下、改訂原稿の締め切り期日を、先生方へお知らせしているところです。最新版刊行まで、しばしお待ちください。(編集N)
プロの技
 カバーは本の顔です。そこで、いつも担当編集者は頭を悩まされます。イメージを湧かせて装丁者にお願いしなくてはならないからです。そんなとき本物の絵の力を借りられるとインパクトがまったく違ってきます。『かかわり合いの心理臨床』では著者の叔父様の絵を借りることができ、格調高く仕上がりました。芸術の力は偉大です。もちろん装丁自体が時代と共に変化していくものですので、今後はどんな形のデザインのものが歓迎されるか分かりませんが、本の内容を象徴するものとしての役割は果たしていくのではないでしょうか。(編集やまぶき)
はじめてのカウンセリング入門(上)
 とても忙しい著者と作らせて頂いた本です。お茶の水にある著者の研究室におじゃますると、山と積まれた本と雑誌が目に飛び込んできました。昨日は東北、明日は九州と全国を精力的に飛び回っていらっしゃいます。著者の「カウンセリングとは、それを受ける人が成長していく過程である」とのお話がとても新鮮でした。なるほど、人は誰かとともに会話したり誰かに理解してもらったりするなかで、こころの翼をのばしていける存在なのかもしれません。インターネットの時代でも、キーワードになるのは、「誰」と「何を」するか。そんな時代に、他者とうまく交流できない人たちはどうすればいいのか? カウンセリングの重要性は、どんどん増していくことになりそうです。(編集S)

■ 2010.JULY
緩和医療学会
 6月18日と19日の2日間、第15回日本緩和医療学会学術大会が東京国際フォーラムで開かれました。今回は「いつでもどこでも質の高い緩和ケアを」をメインテーマに、医学・薬学・看護学等の専門家が集いました。演題数はなんと800を超えていますので、おそらく数千人の参加者があったものと思われます。『緩和のこころ――癌患者への心理的援助のために』の岸本氏も専門医として参加しています。この意外なほどの盛況ぶりには理由があります。かつてはガン治療を中心に行われていた「緩和ケア」が、近年ひろく一般医療に浸透してきたからです。患者中心の医療への動きと相まって、今後さらに目の離せない領域ではないでしょうか。(編集K)
子どもの精神分析的心理療法の基本
 精神分析分野の原稿を前にすると、他分野のようなワクワク感よりも緊張感が先立ってしまいます。精神分析=理解できるか?というステレオタイプ化された認知のせいなのですが、本書も御多分に漏れず、でした。しかし、いざ読み出すと、この偏狭さにもろに、がつんと回し蹴りが入りました。なんか、フツウに、わかる。もちろん先生の文章が読みやすいからなのですが、ホントに小説を読むようにどんどん前に進める。
 第T部まではいつもどおりでしたが、第U部に入ると胸が詰まってきました。セッション記録とともに記されている臨床家の本音。怒り、動揺、失望の中でも精神分析の視点を貫き、探究する姿。タビストックの臨床トレーニング中に起こった教育分析に関する葛藤、そして運命の師ともいえるMr.A.との出会etc.。生身の人間としての研究者に触れた思いがしました。刊行した今、視野が少しだけ拡がった気がしています。(編集N)
誰にも身近な芸術と日常生活
 「もしあなたの日常があなたに貧しく思われるならば、その日常を非難してはなりません。あなた自身をこそ非難しなさい」というリルケの言葉。何という素晴らしさ!芸術による創造に貧困というものはなく、貧しい取るに足らぬ場所もないという。『芸術と心理療法』では古代のように芸術と人生が一体となっていた時代に還ろうと呼びかける。自然、他者、自己との対話によるシャーマニズムの儀式に似て、絵・舞踏・演劇・音楽等で「失われた信仰の儀式」を再発見しようとする。芸術を通して、他人の奴隷とならずに自己のシステムを創造する自由をもっていることに気づくこと。創造的な芸術を実演し、意識を一つの形態から別の形態へ変容させる……現代における心理療法はこの精神の錬金術を行なうのだろう。(編集X)
はじめてのカウンセリング入門(上下)
 カウンセリングにはいろいろな意味があり、自分のことを誰かに理解してもらい、そのなかで示唆を得ることも「カウンセリグ」と呼ぶそうです。人に理解されることが、自分を理解したことへと繋がっていく。そしてこころの辛さや痛みが緩和され、ゆくゆくは消えていく。よく、つらいことや悲しいことを相談された時は、黙ってうなづきながら聴いてあげるだけで良いと言われますが、私などはどうしても自分を出してしまい、失敗してしまいます。「聴くこと」の素人なのですね。この本は「聴くこと」のプロになる道を示してくれます。そういえば、最近、イルカ漁を題材にした『ザ・コーヴ』という映画が物議を醸しています。人の話を静かに受け入れながら聴く。簡単そうでいて、とてもむずかしいことなのでしょう。(編集者S)
【POD版】カウンセリングの技術[第2版]
 故友田不二男先生にうかがった話。昭和29年頃だったか、カウンセリング研究所を開かれた当時、近所の人に何をされているのかと尋ねられ、カウンセリングとお答えになった。それ以降、近所の人から自転車屋さんのようなものをしているらしいと噂されたそうだ。本書の面接記録はテープレコーダーから記録起こししている。「ハァハァ」「ハァ」が多用されていて、あいずちに思えず、同僚の編集者と吹き出した。(戸外でカンシャク玉の音、紙芝居の太鼓の音)などとある。隔世の感あり・・。(編集やまぶき)

■ 2010.JUNE
心理臨床家の手引(第3版)
 この度お陰様で、『心理臨床家の手引』は改訂第3版を出すことができました。第2版(新版)の発行から数えて9年半、初版からは27年あまりが経過しています。その間、編者の2先生は変わりません(!)が、分担執筆の先生方は当然ながら、多少若返りされた感があります。ということは、学生時代に本書で心理臨床を学び、その後臨床心理士資格を取得、そして現在本書の執筆者に名を連ねている先生がいらっしゃるのではないかと想像しています(お心当たりの先生はお知らせください)。ちなみに、各版の担当編集者がそれぞれ異なることに今更ながら気づきました。光陰矢の如し。(粗忽の編集者)
回復への道のり ロードマップ
 犯罪で他人を傷つけてしまうことは本人の人生をも狂わせる悲しい出来事です。間違った思い込みから一生が台無しに……この本は沢山の子供達が再び性非行に走ることのないように、地図に従って課題を達成していくことで正しい考え方や生活習慣が身に付くように工夫されています。本を作る過程で感心しかつ驚いたことは、身だしなみを整えることや物を片づけるという小さなことが性非行を防ぐことにつながるということ。些細なことでもあとで取り返そうとするととてつもない努力が必要になります。学校の先生やご両親も「嘘をつかない」といった日常生活での当たり前の習慣を大事にしなくてはと感じてもらえるでしょう。「僕なんかもう駄目だ」と諦めないで自分の人生を大切にしてもらいたいものです。(編集やまぶき)
作業療法士・理学療法士臨床実習ガイドブック
 背中の肉離れを起こしてしまった。齢のせいか激務のせいかはさておき、むちゃくちゃ痛い(T T)。文字通り半泣き状態で接骨院へ這っていき、ひと月ほど通う羽目になった。ある日院長より、今日の治療は研修生にやらせてほしいと言われ、超音波をかけてもらった。はじめは「大丈夫ですか」を連発していた彼だったが、そのうち、明日の天気の話も真剣にしてくれた。
 臨床実習は、患者の後々の人生がかかっていたりもするので、厳しく指導が行われているようだ。しかも病人・けが人はたいていブルーな気分だから、八つ当たりされることもあるだろう。でも、あなた方がいてくれないと安心して身体を壊せない。がんばれ卵の皆さん!良き先生になって私を救ってください。(編集T)
犯罪被害者のメンタルヘルス
 犯罪や災害によって心に傷を負った人たちへの支援やケアを解説した本です。著者からいただいた原稿をよみ進めながら、平和な日常が壊されてしまった人の悩みがとても深いことを知りました。カバーや本を開いたときのデザインが暗くならないように気をつけたつもりです。力強くとまではいわないまでも、再び立ち上がる力を感じさせる本になってくれればと思っています。(編集者S)

■ 2010.MAY
今、心理職に求められていること
 いま、日本の医療や福祉の現場では、複数の専門家がチームを組んで一緒に働くことが多くなっています。そしてそのチームのなかで、心の問題を担当し、かつ他の職種の人たちの橋渡し役を期待されているのがこの本のタイトルにも入っている職業「心理職」です。この本のなかで、待ち望まれる心理職の姿を医療・福祉の第一線で働く方々に描いていただきました。関連したシンポジウムが東大の安田講堂にて数回開催されており、たくさんの方が訪れ、なんと毎回満員御礼です。心理専門職の目指す方向は、いまとても関心が高まっている分野です。(編集S)
人間関係の心理学[第2版]
▼今どきの親なら一度は経験する難局、PTA役員。昨年度、自分の職業を公表した覚えは一切ないが、「広報部」と指定された上、じゃんけんにも負け、部長を務めた。一人で作った方が断然効率がいいのだが、そこはPTA activity。Tを盛り立て、P同士が友好的にactiveしなくちゃいけない。で、部員皆さんの負担を均等にしつつ、楽しく参加していただくべく策を巡らすものの、不平やら不満やらが塵や埃のようにふわふわ漂ってしまう。▼そこで頭に浮かんだのが本書。「インフォーマル・グループの構造」や「協同的行動」などの項を読み漁り、Leavittの「コミュニケーション回路の実験」(本書p.181)を“追試”してみた。結果は……解説どおりだった。▼ギスギスした空気に耐えかね、断られるのを承知で、「次回の部会は夕刻、居酒屋にて」と提示したところ、全員が嬉々として参加してくれた。その後は信じられないほどスムーズに事が運んだ。呑みュニケーション侮るなかれ。(編集T)
知覚を測る
 知覚研究のうえで数々の業績をあげている著者は、また多くの優秀な研究者を輩出していることでも知られています。その内の異色(?)の一人が現政権の総務大臣原口一博氏です。著者がかつて東京大学で卒論指導を担当しました。昨秋に大臣室を訪れた著者は、「人間あっての政策です」との言葉を贈られたそうです。情報通信政策にもかかわる大臣ですから、知覚研究=人間のコミュニケーション能力ととらえれば、一見無縁にみえる政治の世界とのつながりも見えてくるのではないでしょうか。今後の政策を心理学的に読んでみることも面白いかもしれません。(M)
服従実験とは何だったのか
 テレビ局から心理学者の顔写真の依頼が時々来る。今回は服従実験で有名なミルグラム。服従実験は『エス』という映画にまでなった有名なものだが、その他にもミルグラムには面白い実験が沢山。日本でいう「世間は狭い」を確認しようとした「六次の隔たり」。アメリカで実験したら6人の他人を間に挟むと大統領にまで行き着いたとのこと。信じられない!このほかにも「放置手紙置換法」など。日本の研究者にもどんどんユニークな実験をしてもらいたいな。ちなみにこの番組は見逃してしまった。(編集やまぶき)

■ 2010.APR.
モノの意味
 たいていの人は、モノを必要としていて、それを日々、手に入れながら生きています。
でも、「あなたから持ちモノをすべて奪ってしまったら、あとには何にも残らない」と言われたらどうでしょうか。「そんなことはない、自分はどこまでもいっても自分だ」と反論したくなりますが、たとえば、急に、仕事道具がすべて消えてしまったらどうなるか……考えてみたことありますか?
 われわれ本を造っている人間も、紙とペン(とパソコン)をもっていかれたらお手上げですし、その瞬間から自分が何者なのかがあやしくなってくるやもしれません。
 人はモノがあってこそ「人」であり、モノは人間の半身である、と本書は強く主張します。そう言われてみれば、記憶だって日記や写真や本のようなモノにして残しますよね。
   * * *
 心理学者チクセントミハイの“The Meaning of Things”は名著として名高かく、長らく日本版が期待され、今回やっと『モノの意味』として刊行されました。傍らに置けば、あなたの特別なモノになること請け合いの本です。
 そして、モノが売れない……モノが売れない……と嘆く声への答えは、この本のなかにこそ隠れている気がするのです。(編集者S)
福祉の哲学[改訂版]
 今年度も無事(?)に過ぎようとしていますが、ありがたいことに担当した本の数冊が増刷を迎えることができました。編集者やっててよかった、というより、増刷できてとりあえずは顔を上げて社内を歩ける、というのが本心です。なにせ人文書ってロングセラーが多い、というより、細く長く売れていくケースがほとんどなので、初版をドバーっと刷って、はいこれで終わりという販売方式は採らない。よって、増刷してようやく“一人前”なんです。だから、増刷通知が来るとホッとするという心理メカニズムが出来上がっちゃうんですね。
 と、前置きが長くなりましたが、今回は栄えある2刷目を迎えた本をご紹介します。
『福祉の哲学(改訂版)』(阿部志郎著)です。この本は、初版が約10年間で14刷りを重ねた“優良書”です。しかも、某大学の入試問題に本書の一部が取り上げられたりもしました。ただ、初版は並製で、社会福祉士国家試験のためのテキストシリーズの一冊として刊行していたので、改訂版ではシリーズから独立させて、新たに書き下ろしの章も加えて、上製本と装いも新たに刊行しました。
 この本、じつは高校生にも読んでいただきたい内容なんです。とくに、阿部先生は牧師さんでもあるので、ミッション系の学校ではとってもマッチすると思います(ミッション系高校の教師をしている友人も、クラスだよりのネタとして重宝してくれています)。ご興味の持たれた先生、是非お手に取ってみてください。もちろんミッション系に限らず、高校の福祉教育や道徳教育の副読本としてお勧めです(太鼓判)。
 この本は、人として生きるとはどういうことなのか、を考えさせてくれます。ゲラを読みながら清々しい気持ちになるという稀な体験ができた、貴重な一冊でした。(編集T)
ストリート・ウォッチング
 企画打ち合わせに、某大学の建築学科の研究室にお邪魔しました。理系アレルギーの身で恐る恐る見学させていただくと、予想に反してまるで玩具箱をひっくり返したよう・・。模擬喫茶店に照明器具の実験設備あり、階段教室で設計図を引く学生あり、紙で建築モデルを作成する学生あり・・楽しそう! 何とこの大学は昼間より夜の方が学生数が多く、寝袋持参で夜通し学生が熱心に学んでいるそうです。そんな学生や大学院生が街へ出ると何をどう見るか、その視点を集めたのがこの本です。イラストや写真満載でとても楽しい本に仕上がりました。ぜひ書店で手にとってご覧ください。(編集X)
【シリーズ】日本の心理臨床
 「未曾有」の読み方を間違えた某首相の日本語力がマスコミに取り上げられたり、『読めそうで読めない漢字の本』がベストセラーになった、ちょうどその頃、編集に取りかかったのがシリーズ《日本の心理臨床》(全6巻)でした。そこで、はたと思いついたのが、漢字に読み仮名(ルビ)をふること。一般書ではめずらしくないルビを専門書でも活用し、若い読者にも読みやすいようにと、常用漢字音訓表にない読みには「すべて」ルビを振ってみました(あるいは、振ったつもりです)。しかしこの作業が意外に手間取ることに気づいたときには後の祭りで、シリーズ物ゆえに方針変更はできず、その後辞書を引き続ける毎日です。でも何故か故河合隼雄先生のお名前にだけはルビが振れませんでした。(粗忽の編集者)

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