■ 書籍情報

書名 【POD版】心の傷を担う子どもたち
次代への治療教育と藝術論
対談・著者 中村雄二郎・川手鷹彦
ジャンル 臨床心理学 ― 心理療法(カウンセリング)
教育・保育
判型・頁数 四六判・236頁
本体価格 2,200円
税込価格 2,310円
刊行年月日 2007年3月10日
2000年6月10日
ISBNコード ISBN978-4-414-93016-0

解説 障害を持つ子どもたちや非行に走る子どもたちは、心に深い「傷」を負っている。彼らは私たちが受けるべき傷を肩代わりしているといえる。したがって私たちは、彼らの「痛み」がなんであるかを問いかけ、彼らの心の声に耳を傾けなければならない。現代日本の教育の問題点を明らかにし、子どもを尊ぶ教育文化の真の再生とそのための藝術の有り方を提言する。

目次 第一部  対談
 1 「演劇的知」と「臨床の知」ならびに「南型の知」へ
 2 悪を見つめること、病いを癒すこと
 3 治療教育による文化の再生

第二部  教育について
 4 哲学者の眼から
 5 治療教育の観点から見た神戸の事件
 6 文化の核心としての「治療教育」
 7 日常生活における子どもと藝術

著者紹介 なかむらゆうじろう|哲学者。明治大学名誉教授。
かわてたかひこ|演出家。言語テラポイト。藝術・言語テラピー研究所「い丘」主宰。

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読者の声  川手氏はグノーシス的な考え方を紹介する中で、「悪」を人間に植え付けた存在として造物主を捉える、と述べておられます。またゲーテの『ファウスト』には、「悪」という存在がそもそも人間の心にはあり、しかしそれを克服する人間が尊厳なのだというグノーシス的な考え方があると指摘しておられました。私は高校の教員として、いわゆる非行にはしる子供達を目の前にして、悪を克服する人間の心というものを、思い描いてきました。しかし、中村、川手両氏の対談を読み進めていくと、このことはとても微妙な問題を含んでいるように思われてきました。悪というのはほんの一時の心の迷いなので、その迷いに惑わされてはならない。そういうふうに今まで私は考えていました。悪はあくまで非存在である、非存在にされてしまった悪のリアリティが非常に弱い。西欧キリスト教的思考ではそのように思われていると中村氏も説明しておられます。私は、悪はリアリティの弱いもので、当然克服されるべくあるもの、すなわち悪の非存在を前提としてそれは仮に存在するものなのだと安易に考えてきたのかもしれません。しかし、悪は善と同様造物主の造り出したものなのだということを、グノーシスの考え方は示しています。すると、さらにこのようにも考えられないでしょうか。悪は克服されるべきものなのではなく、目指されるものなのだ、少なくとも人間の心のありかたとして、それは自然なのだと。だからこそ、目指すという方向性においては人の心の内では善も悪も本来は同じであり、それゆえ心の外側の文化、あるいは知のあり方によって、それは切り替わりうる。両氏の議論に刺激されてそんなことを考えました。善・明なるものだけを果たして人間は目指すのでしょうか。人間の生にとってそれとまったく等価なものとして悪・暗なるものが人間の中に目指されているのではないでしょうか。それが同時に進んで行く人間というものを、私は中村氏と川手氏の対談を読みながら考えさせられました。
 若者達の悪行が連日のように報道される中、以前人がみな善を目指していた(と信じられていた)ときのように、今若者たちが悪を目指している。しかしそうであるがゆえに、悪は善に切り替わりうるのではないか。川手氏はこう言っておられます。「「悪」と付き合うには、方法があります。方法を知らないと恐ろしい目に遭います。残念ながら、神戸の少年は「悪」との真の付き合い方を知らなかったために、あのような行為をなしてしまったのではないか、と思います。「悪」と付き合う方法を知った人間を古代、人は「魔術師」あるいは「王」と呼んでいたのではないでしょうか。「悪」と付き合う方法を知っているからこそ、社会を統治することができたのではないでしょうか。」もちろん自らを統治するために、また自らの内なる「悪」と若者達は「真の付き合い方」をしなくてはならないのでしょう。そして、川手氏の言う治療教育がその方法を指し示し、善・悪の切り替えポイントの役割を果たそうとしているのだと私は思いました。
 教育は善・明の理屈だけでは未来への展望が閉塞している今日、中村・川手両氏のグノーシスの視点からの教育へのアプローチは、善・明とともに悪・暗といかに付き合うかということをも教育の内に含み込んでゆかなくてはならないのではないかと、現場の教員である私に多くの示唆、考えるヒントを与えてくれました。両氏に感謝申し上げます。
 また、本書を刊行なさった貴社のご努力に敬意を表しながら、今後も両氏の子供たちをめぐる議論が私たちにわかりやすいかたちで手にとることが出来るよう貴社のご活躍にご期待申し上げます。(高校教諭 井上哲幸)   

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